天災と美術骨董品の話


先月末に起きた台風19号によって各地に甚大な被害があった。

被災された方に、心からお見舞い申し上げる。

台風19号から、そろそろ1ヶ月が経とうとしているが、

未だに復旧の目処が立たない状態が続いている。

倒壊した千葉のゴルフ練習場では、やっと民家にめり込んでいた鉄柱を取り除き始めた。




台風19号は、気象庁などから、早めに警告がなされ、

ある程度予測が立てられた台風だった。

日本の観測衛星は優秀、正確で、気象庁発表やテレビ、マスコミなどで早めに

『過去に例を見ない規模の台風』『命を守る行動を』と

アナウンスされ、台風当日は、鉄道の運休や会社の休業など皆、台風に備えるだけの、

時間もたくさんあった。




それでも、台風当日に荒れ狂う川を見に行って流されたり、

車で移動して水没し立ち往生したりする迷惑者が後を絶たないのは何故か?

九死に一生を得て生還した人の話を聞くと、命を懸けてまでその行動をする理由は1ミリも無い。

その無謀な行動のおかげで、警察や消防、自衛隊の方々が命懸けで救助に当たらなければならない。

そのことに当の本人(迷惑者)は気付いていないのだろう。

自然を舐めた行動の報いには、命を失う可能性が高いのだ。




台風19号の中、美術骨董業界はどうであったか?

当社においては、商品の垂直避難を実行し高価な品は2階に避難させた。

所詮人類は自然には敵わないまでも出来る事をやり、

あとは、人事を尽くして天命を待つといったところであった。

今回の台風では、人事を尽くす時間は十分にあった。

それからは天気専門のネットチャンネルを見ながら、付近の情報収集をしていた。




そんな中、あるニュースが飛び込んできた。

川崎市民ミュージアムが被災したという。

それも、地下収蔵庫が浸水し、所蔵品を水没させたという事だった。

今回の画像は浸水して、水が引いた後の地下収蔵庫内(市提供)

そもそも、あんな川っぺりにある美術館で、地下で収蔵品を管理し、

台風が来る情報を得ていながら、なんの対策も取っていなかったのに愕然とした。




川崎市民ミュージアムは川崎市が事業主体者で、運営を管理会社に委託している。

収蔵品も委託、寄付などが多いようだ。

お役所仕事の中には収蔵品を地下室から2階へ避難させるといった、仕事は含まれていないようだ。

さらに川崎市民ミュージアムは、被災した収蔵品修復費を寄付により賄おうとしている。

とことん身銭を切らない、お役所仕事である。




2011年東日本大震災の時、東北の人々は、津波が迫ってくる中、

伝来の骨董品や家宝、受け継がれた道具類などを持って高台へと逃げた。

当時、宅配買取で被災地から続々と商品が届いた。

送り先の宛名を見ると、〇〇避難所や〇〇体育館などが多かった。

受け継いできた物を未来に繋ぐ為の命を懸けた行動をしたのだ。




美術骨董業界にいると、公立、国立美術館の学芸員たちの

信じられない粗相が漏れ伝わってくる。

身銭を切って無いので作品に対する情熱や意識が希薄なのだろう。

作品をお釈迦にするのは、確実に人災の場合が多い。




学芸員になることが人生のゴールで、のほほんと職務についている方々よ、

今、目の前にある作品は、戦争や火災や天災を越えて今そこに存在している。

もしかすると誰かが命を懸けたおかげで、

現在まで存在している作品であることを忘れないで欲しい。


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